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デザインの著作権と肖像権|素材選びと納品で確認すること

第7章 データと現場の知識 読了目安 9分

INDEX目次

    ネットで拾った画像をポートフォリオに載せてもいいのかな。参考にしたサイトに似すぎていないかな。
    作れるようになってから、急に不安になるところです。

    ここは感覚で判断すると事故ります。ただ、覚えることは多くありません。誰の許可が要るのか、どこまでが自由なのか。原則を3つ押さえれば、作業中に迷う場面はほとんどなくなります。
    この記事では著作権と肖像権の基本、素材の使用条件の読み方、そして自分の作品を点検する手順をまとめます。

    はじめにお断りしておきます。ここに書くのは一般的な考え方の紹介で、個別の案件への法的な助言ではありません。実際のトラブルや契約の判断は、弁護士など専門家に相談してください。制度そのものは文化庁が案内していて、公益社団法人 著作権情報センター(CRIC)も基礎的な解説を公開しています。

    もくじ

    著作権は作った瞬間に発生する

    まず知っておきたいのは、著作権は登録しなくても発生することです。イラストを1枚描いた瞬間、写真を1枚撮った瞬間に、作った人の権利が生まれます。マークを付けたかどうかも関係ありません。

    ここから2つの原則が出てきます。

    • 「フリー素材」と書いていないものは、原則すべて誰かの権利があると考える
    • 自分が作ったものにも、同じように権利がある。だから使い方を自分で決められる

    ネットで検索して出てきた画像は、この「誰かの権利があるもの」です。表示されているから自由に使えるわけではありません。保存できることと、使っていいことは別です。

    もう1つ、著作権には期限があります。日本では作った人が亡くなってから70年です。それを過ぎたものはパブリックドメインと呼ばれ、自由に使えます。古い名画を素材に使えるのはこのためです。

    著作権と肖像権はどこが違うか

    混ざりやすい2つですが、守っている対象が違います

    著作権は作品を作った人の権利、肖像権は写っている本人の権利という違いを、1枚の人物写真には両方の許可が要ることまで含めて比較した図解

    著作権は「作品」を守ります。写真・イラスト・文章・音楽・デザイン。作った人の権利です。
    肖像権は「その人の姿」を守ります。撮った人ではなく、写っている人の権利です。

    著作権肖像権
    守る対象作品そのものその人の顔・姿
    権利を持つ人作った人写っている人
    発生するとき作った瞬間撮られた瞬間
    許可を取る相手作った人(または権利を持つ会社)写っている本人
    期限作者の死後70年期限の定めがない

    大事なのは、1枚の写真に両方がかかることです。街で人物を撮った写真を使うなら、撮影者の許可(著作権)と、写っている人の許可(肖像権)の2つが要ります。片方だけでは足りません。

    だから「自分で撮った写真だから自由に使える」は成り立たない場面があります。人が写り込んでいるなら、そこは別の話です。

    街で撮った写真に通行人が入っている場合はどうするか。誰か分かる形で写っているなら、本人の許可を取るのが基本です。取れないなら、その部分を切り落とすかぼかしてください。判断に迷う写真は、素材サイトの写真に差し替えるのがいちばん確実です。

    デザインのどこまでが守られるか

    「どこまでがパクリか」という不安は、ここを知ると軽くなります。

    著作権が守るのは具体的な表現で、アイデアや手法は守りません。「余白を広く取る」「左揃えでまとめる」「淡い青でまとめる」といった作り方は誰でも使えます。守られるのは、実際に描かれた絵や配置そのものです。

    だからレイアウトの型を参考にするのは問題ありません。プロも毎日やっています。危ないのはこちらです。

    元に近すぎる使い方
    • 参考サイトの画像やイラストを、そのまま持ってきて使う
    • 文字を差し替えただけで、配置も色も写真も同じにする
    • ロゴやキャラクターを、少し変えて自分の作品に入れる
    • 他人の作品の一部を切り取って素材にする

    判断に迷ったら、こう考えてみてください。元の作品を知っている人が見て「あれだ」と分かるか。分かるなら近すぎます。
    模写の練習そのものは問題ありませんが、それを自分の実績として公開すると話が変わります。練習として見せるなら、参考元を明記して「模写です」と書いてください。

    ロゴやマークには、著作権とは別に商標権(会社名やマークを登録して守る制度)もあります。企業のロゴを勝手に使えないのはこちらの話です。企業の名前やマークを扱う仕事では、公式サイトに「ロゴの使用について」のページがないかを先に探して、書いてある条件どおりに使ってください。

    素材の使用条件を読む

    実務でいちばん使う知識がここです。素材サイトから写真やイラストを使うとき、条件を読まずにダウンロードしないでください。

    ストックフォトは、写真やイラストをまとめて提供するサービスのことです。有料のものも無料のものもあります。無料でも条件はサイトごとに違うので、「無料=何でもOK」ではありません。

    たとえばUnsplashや写真ACには、利用規約や「よくある質問」のページがあり、商用利用や加工の扱いをそこで説明しています。ダウンロードのボタンを押す前に、このページを開く順番にしてください。

    素材を使う前に確認する5項目を並べた図解。商用利用の可否、加工の可否、クレジット表記の要否、使える範囲、禁止されている使い方を順に見て、最後に出所を記録する手順をまとめている

    見るべき項目は5つです。

    素材を使う前に見る5項目
    1. 商用利用ができるか:仕事で作るもの、広告、販売する商品はここが要ります。個人利用のみの素材は使えません
    2. 加工ができるか:色を変える、切り抜く、文字を重ねる。禁止している素材もあります
    3. クレジット表記が要るか:作者名やサイト名を載せる条件です。書き方まで指定があることもあります
    4. 使える範囲:Webだけか、印刷物にも使えるか。使用回数や部数の上限があることもあります
    5. 禁止されている使い方:ロゴへの使用、再配布、素材そのものの販売。ほとんどのサイトが禁止しています

    フォントも同じです。無料フォントにも使用条件があり、商用利用が有料のもの、ロゴへの使用を禁止しているものがあります。Google Fontsのように配布ページでライセンス(使用条件)を示しているところもあるので、バナーの文字に使う前に、配布元のページを一度読んでください💡

    AIで生成した画像も、生成に使ったサービスの利用規約に条件が書いてあります。商用利用の可否や、元になった素材の扱いはサービスごとに違います。同じように条件を読んでから使ってください。

    仕事で作ったデザインの権利は誰のものか

    ここも質問が多いところです。原則から言うと、作った人に著作権が発生します。依頼を受けて作った場合も、お金を払ってもらった時点で自動的に相手のものになるわけではありません。

    実際には、契約でどうするかを決めます。よくあるのは次の3つです。

    • 著作権を相手に譲る:納品後は相手が自由に使える。制作費に譲渡分を含めるのが一般的です
    • 使う範囲だけ許可する:権利は制作者に残し、決めた用途でだけ使ってもらう
    • 取り決めをしない:あとでもめます。おすすめしません

    もう1つ、実績として公開していいかも確認しておいてください。権利を譲っていても、ポートフォリオへの掲載は別の話です。公開の時期や、クライアント名を出せるかどうかを最初に聞いておくと安心です。

    会社員として業務で作った場合は、また扱いが変わります。就業規則や契約の内容で決まる部分が大きいので、勤め先の決まりを確認してください。

    ミニ実践:ポートフォリオの素材を総点検する

    今ある作品を1つずつ点検します。作品数にもよりますが、3作品で20分ほどです。表計算ソフトかメモアプリを1つ開いてください。

    1. 作品を1つ選び、使っている素材を全部書き出す。写真・イラスト・アイコン・フォント・背景の模様。1つ残らず並べます
    2. それぞれに出所を書く。素材サイト名、自分で撮影、自分で作成、のどれか。思い出せないものは印を付けます
    3. 素材サイトのものは、使用条件のページをもう一度開く。商用利用・加工・クレジットの3つを確認します
    4. 人が写っている写真は、撮影者と本人の両方の許可があるか確かめます
    5. 参考にした作品がある場合は、並べて見比べる。元を知っている人が「あれだ」と気づくレベルなら作り直します
    6. 出所を思い出せない素材は、差し替える。調べる時間より作り直すほうが早いことが多いです
    7. 点検結果を1つの表にまとめて残す。次の作品からは、使った瞬間に書き足していきます

    7つ目が本題です。あとから思い出すのは無理なので、使った瞬間に記録する習慣にしてください。素材名・出所・条件の3列だけで足ります。

    点検が終わったか、確認してみましょう。

    点検が終わったかの確認
    • すべての素材の出所を書き出せた
    • 商用利用ができる条件か確認した
    • 加工の可否を確認した
    • クレジット表記が要る素材は、指定どおりに載せた
    • 人が写った写真は、撮影者と本人の両方の許可がある
    • 参考にした作品と並べて、近すぎないか見比べた
    • 出所の分からない素材は差し替えた
    • 使った素材の記録を残す場所を作った

    練習用のお題で作った作品も同じです。バナーデザインお題20選で作ったものを公開するときも、使った素材の条件は確認しておいてくださいね。

    よくある質問

    デザインに著作権はありますか?

    作品として表現されたものには、作った時点で権利が発生します。登録の手続きは要りません。
    ただし守られるのは具体的な表現までで、「余白を広く取る」といった作り方そのものは対象外です。工業製品の形など、別の制度で扱う領域もあります。

    デザインはどこまでがパクリになりますか?

    線引きの目安は、元の作品を知っている人が見て「あれだ」と分かるかどうかです。
    配置の型や配色の考え方を参考にするのは、ふつうの制作です。危ないのは、画像やイラストをそのまま使う、文字だけ差し替えて他は同じにする、といった作り方です。
    実際に問題になるかどうかは個別の事情で変わります。仕事で不安が残るなら、公開前に専門家へ相談してください。

    業務委託で作ったデザインの著作権はどうなりますか?

    原則は作った人に発生します。支払いだけで自動的に移るわけではありません。
    実務では契約で決めます。譲るのか、使う範囲だけ許可するのか。あわせて、ポートフォリオに載せていいかも先に確認しておくとトラブルを避けられます。
    取り決めの書き方に迷うときは、専門家に見てもらってください。

    無料の素材なら自由に使っていいですか?

    無料と自由は別です。サイトごとに条件があり、商用利用の可否・加工の可否・クレジット表記の有無が違います。
    禁止されやすいのは、ロゴへの使用、素材の再配布、素材そのものの販売です。ダウンロードの前に利用規約を開く。これを習慣にしてください。

    次に学ぶこと

    最後に整理します。

    • 著作権:作った瞬間に発生する。守るのは具体的な表現で、アイデアは対象外
    • 肖像権:写っている人の権利。人物写真は撮影者と本人の両方の許可が要る
    • 素材の条件:商用利用・加工・クレジット・使える範囲・禁止事項の5つを読む
    • 仕事の権利:契約で決める。実績として公開していいかもあわせて確認する
    • 記録:使った素材と出所を、使った瞬間に残す

    制度の全体像を知りたくなったら、文化庁の著作権に関する案内と、公益社団法人 著作権情報センター(CRIC)の解説を見てみてください。どちらも基礎から順に読める形でまとまっています。

    次はCIとBIの基礎へ。企業のロゴや色をどう扱うかという話で、今回の権利の知識がそのまま効いてきます。素材を扱うデータの側はデザインデータの基本にまとめています。

    全体の並びはデザイン基礎コースの目次から確認できます。

    第7章 データと現場の知識 の他のレッスン

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