写真もイラストもないのに、文字だけでかっこいいポスターがあります。あれは特別なフォントを持っているからではありません。組み方で差がついています。
文字を読みやすく、意図どおりに見せるための組み方をまとめてタイポグラフィと呼びます。書体選び、サイズ、行間、字間、置く場所まで全部が入ります。
このレッスンでは、タイポグラフィが指す範囲、守ると崩れない4つのルール、キャッチコピーの改行、避けたいオルファンまで説明します。読み終えたら、文字だけのデザインを1枚組めるようになりますよ。
タイポグラフィ・フォント・カリグラフィーの違い
近い言葉が3つあります。指しているものが違うので、先に切り分けます。

| 言葉 | 指しているもの | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| フォント | 文字のデータ。游ゴシック、Noto Sans など | 文字の素材 |
| タイポグラフィ | その文字を選んで組む行為と、その結果 | 組み方 |
| カリグラフィー | 手で文字を美しく書く技術 | 手書き |
フォントは道具、タイポグラフィは使い方です。同じ游ゴシックでも、サイズと行間と置き方で仕上がりはまったく変わります。だから「いいフォントを買えば解決する」とはなりません。
カリグラフィーは1文字ずつ手で書きます。ペンの角度や筆圧で線の太さを作る技術で、既にある活字を組むタイポグラフィとは作業そのものが別です。ロゴで手書き風の文字を作る仕事は、レタリング(1文字ずつ形を描き起こす作業)と呼び分けます。
崩れない4つのルール
初めて文字だけのデザインを組むなら、この4つだけ守れば形になります。
- 書体は2種類まで。見出し用と本文用で1つずつ。1種類で組み切ってもかまいません
- サイズは3段階。見出し・小見出し・本文。段階を増やすほど、どれが大事か伝わらなくなります
- 行間は文字サイズの1.5〜1.75倍。見出しだけ1.2〜1.4倍に狭めます
- そろえる線を1本決める。迷ったら左揃え。中央揃えは要素が2〜3個のときだけ
サイズの3段階は、差をはっきりつけてください。見出しを本文の1.2倍にしても、差として伝わりません。1.5倍以上を目安にします。この考え方はジャンプ率で数字つきで説明しています。
この4項目は、企業が公開しているデザインの決まりごとを見ると、そのまま数値で書いてあります。
- デジタル庁デザインシステム(2022年公開):文字サイズと行間が段階ごとに決められています。見出しから注釈まで、使う数値が最初から限られていることが分かります
- SmartHR Design System:本文と見出しの役割ごとに、サイズと太さの組み合わせが決まっています
- GoogleのMaterial Design:見出し・本文・ラベルといった役割名で段階が分けてあります
共通しているのは、その場の気分でサイズを決めていないことです。あなたの制作でも、使うサイズを3つ先に決めて紙にメモしておくと、同じ状態が作れます。
書体を2種類にするときは、性格が違うものを組み合わせます。ゴシック体と明朝体、太いのと細いの。似た書体を2つ並べると、そろえ損ねたように見えます。
キャッチコピーは意味で改行する
キャッチコピーは、文字組みの差が一番出るところです。同じ言葉でも、改行の位置で読みやすさが変わります。

枠の右端で自動的に折り返すと、意味の途中で切れます。読む人はいったん頭の中で言葉をつなぎ直すので、そのぶん伝わるのが遅れます。改行は手で入れてください。
電車の中吊り広告や駅のポスターを見ると、キャッチはほぼ手で改行してあります。1行目と2行目の長さが近く、意味の切れ目で分かれている。次に乗ったとき、1枚だけ確かめてみてください。
- 意味のかたまりで切れているか(「はじめての/バナー制作」)
- 助詞の直後で切っていないか(「はじめての、バ/ナー制作」はNG)
- 行の長さがそろっているか。1行目と2行目の差が大きいと不安定に見えます
- 3行以内に収まっているか。それ以上は本文として組みます
- 声に出して読んで、息継ぎの位置と改行が合っているか
最後の1つが一番早く判定できます。読んで詰まるところで切れていたら、改行位置が合っていません💡
オルファンを残さない
オルファンは、段落の最後に1語や1文字だけが取り残された行のことです。「オルファン=孤児」で、仲間から離れた行を指します。段落の1行目だけが前の段の最後に残る形はウィドウと呼び分けます。
放っておくと、その1文字が余白の中で浮いて目立ちます。読む人は意味のない場所で目を止めることになります。
- 言葉を1〜2文字だけ削って、前の行に収める
- 文字組みの幅を数ミリ広げる(字間で調整しない)
- 言い換えて文字数を変える。「とても大切です」を「大切です」にするだけで収まります
- どうしても残るなら、そこで段落を分けて意図的な余白にする
直すときに長体(文字を横に縮めて縦長にすること)をかけて無理やり詰めないでください。その行だけ文字が細くなって、かえって目立ちます。
文字だけで1枚を成立させる
写真もイラストも使わずに1枚組んでみると、タイポグラフィの練習になります。飾りが使えないぶん、判断が文字組みだけに集中するからです。
やることは3つです。主役を1つ決める・大きさで差をつける・余白で区切る。文字の大きさの差が主役を作り、余白がグループを分けます。
実例はスマホの設定画面です。写真もイラストもなく、見出し・項目名・説明文の3段階と余白だけで区切ってあります。文字だけでも迷わず読めるのは、大きさの差とグループ分けができているからです。
Appleの製品ページも同じ作りです。製品名を思い切り大きく、その下の1行を小さく。書体は1種類で、太さとサイズの差だけで主役を作っています。飾りの線も枠も使っていません。差をつける道具が大きさと余白しかないと決めると、こういう形になります。
文字を極端に大きくして紙の端まで伸ばす、縦組みと横組みを組み合わせる、1文字だけ色を変える。この3つは、文字だけの構成で効きやすい手です。ただし1枚で1つまでにしてください。
ミニ実践:ポスターの工夫を3つ書き出す
10分の観察です。作る前に、見る目を作ります。
- 好きなポスターや本の表紙を1枚選びます。駅で撮った写真でも、本棚の1冊でもかまいません
- 書体が何種類使われているか数えます。たいてい1〜2種類です
- 一番大きい文字と一番小さい文字の大きさを、何倍か目で見積もります
- 改行の位置を書き写して、なぜそこで切ったのか考えます
- 気づいた工夫を3つ、言葉にしてメモします
「かっこいい」で止めずに、「書体1種類・差は4倍・意味で改行」まで言葉にしてください。言葉にできた工夫は、自分の作品で再現できます◎
よくある質問
次に学ぶこと
整理します。フォントは素材、タイポグラフィは組み方。書体2種類・サイズ3段階・行間1.5〜1.75倍・そろえる線は1本。キャッチコピーは意味で改行。オルファンは言葉を削って収める。
次は行間を数字で決められるようにしましょう。行間と文字組みで、用途別の目安と箇条書きの組み方までまとめています。
書体そのものの選び方はフォントと書体の基本とフォントの選び方へ。学ぶ順番はデザインの基本コースにまとめています。
