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デザインシステムの作り方と、ガイドラインとの違い

第6章 WebデザインとUI/UXの基礎 読了目安 9分

INDEX目次

    ページを5枚も作ると、必ずこうなります。「このボタン、前は角丸6pxだったっけ?」「見出しの青、微妙に違う…」

    毎回ゼロから決めているからです。決め直すたびに時間が溶けて、しかも全体はそろいません。
    そこで出てくるのがデザインシステムです。このレッスンでは、デザインガイドラインとの違い、中身の4要素、アトミックデザインの考え方を整理します。会社の大きな仕組みの話で終わらせず、ひとりでも作れる小さい版まで持っていきますね。

    もくじ

    デザインシステムは「毎回決めない」ための仕組み

    デザインシステムは、そのサービスで使う色・文字・部品と、その使い方をひとまとめにした仕組みです。文書だけではありません。実際に貼って使える部品と、判断に迷ったときの考え方まで含みます。

    目的は2つです。作る速さを上げることと、誰が作っても同じ見た目になること
    ボタンが決まっていれば、ボタンを考える時間はゼロになります。空いた時間は、そのページで本当に考えるべきことへ回せます。

    デザインシステムは、選択肢を増やす道具ではありません。決めなくていいことを増やす道具です。

    言葉だけだと形が見えないので、実物を見るのが早いです。デザインシステムは公開されているものが多く、どれも無料で中身を読めます。

    だれでも読める公開デザインシステム
    • デジタル庁デザインシステム:行政のサービス画面で使う色・文字・部品がまとまっています。日本語で読めるので、最初の1つに向いています
    • Material Design(Google):AndroidやGoogleのアプリの土台です。ボタンの種類ごとに、どの場面で使うかまで書いてあります
    • Human Interface Guidelines(Apple):iPhoneのアプリの基準です。どのアプリでも「戻る」の位置や操作の感じが似ているのは、みんなここに沿って作っているからです

    3つとも、部品と「その部品をどの場面で使うか」がセットになっています。読む文書ではなく、使う道具の形をしているのが特徴です。

    日本語で読めるものは、ほかにもあります。どれも会社が自分で公開していて、登録なしで中身を見られます。

    日本語で読めるデザインシステム
    • SmartHR Design System:働く人が使う業務サービスの部品と、その使い方が読めます
    • Ameba Spindle:Amebaのサービスで使う部品と原則をまとめたものです
    • freeeのvibes:freeeのサービスの考え方と部品が並んでいます
    • メルカリのデザインシステム:スマホアプリの部品を中心にまとめたものです

    デザインガイドラインとの違い

    デザインガイドラインは、守ってほしいルールを書いた文書です。ロゴの余白、使ってよい色、禁止する表現。読んで、人が手で守ります。

    デザインシステムは、そのルールに使える部品更新の仕組みを足したものです。守るかどうかを人の記憶に任せず、用意された部品を使えば自然にそろう形にします。

    デザインガイドラインデザインシステム
    中身ルールを書いた文書ルール+使える部品+使い方の説明
    PDFやスライド部品ファイル、コード、公開サイト
    守り方読んで、人が気をつける用意された部品を使えばそろう
    更新版を作り直す部品を直すと、使っている全画面へ届く
    向いている規模ロゴやブランド表記の統一画面数の多いサービス、複数人の制作

    対立するものではありません。ガイドラインはデザインシステムの一部だと考えてください。小さい制作ならガイドラインだけで足りますし、画面が増えてきたら部品を足していけばいいです。

    名前で見分けようとすると、かえって迷います。分かりやすい例が一休です。

    実例: 一休の IKYU Design Guideline
    • 2023年12月に公開しました。一休.com・一休.comレストラン・一休.comスパの3つで共通に使う指針です
    • 名前は「ガイドライン」ですが、中身は部品とその使い方まで含みます。デザインシステムと呼ぶほうが近い形です
    • 導入のときにYahoo!トラベルとボタンのような小さい部品を共通化した話を、開発者ブログで公開しています

    小さい部品から共通化するのは、ひとりの制作でも同じです。作品ごとにボタンを作り直すのをやめる。ここから始めると、複数の作品が同じ顔になります。

    デザインシステムの構成要素は4つ

    公開されているものを何個か読むと、だいたいこの4つで組み立ててあります。

    デザインシステムの構成要素を4つに分けた一覧図。原則・スタイル・コンポーネント・使い方の説明を、それぞれの中身の例つきで並べた図
    デザインシステムの4つの中身
    1. 原則:判断に迷ったときの基準。「迷ったら分かりやすさを取る」のような一文
    2. スタイル:色、文字サイズ、余白の単位、角丸、影。数値で決めた土台の部分
    3. コンポーネント(部品のこと):ボタン、入力欄、カード、見出し。状態(押せる・押せない・エラー)まで用意する
    4. 使い方の説明:いつ使うか、いつ使わないか。良い例と悪い例を並べて書く

    抜けやすいのは4番です。部品だけ配ると、それぞれが好きな場面で使い始めて、結局そろいません。「使わない場面」まで書いてあるかどうかが、続く仕組みの分かれ目です💡

    この4つで組み立ててあるのは、日本のものだけではありません。海外の大きなサービスも同じ形です。

    海外の公開デザインシステム
    • Polaris(Shopify):ネットショップの管理画面の部品がそろっています
    • Carbon(IBM):仕事で使う画面向け。表やグラフの部品まであります
    • Fluent(Microsoft):WindowsやMicrosoftのアプリの見た目の土台です
    • Primer(GitHub):開発者向けサービスの部品をまとめたものです
    • ほかにAdobeのSpectrum、AtlassianのDesign System、SalesforceのLightning、UberのBaseも読めます

    どれも原則・スタイル・コンポーネント・使い方の順で並んでいます。1つの読み方を覚えると、残りも同じ順で読めます。英語のものは、ボタンや入力欄の絵を見るだけでも参考になります。

    アトミックデザイン:部品を5階層で整理する

    アトミックデザインは、部品を大きさの順に5つの階層へ分ける考え方です。ブラッド・フロストが提唱しました。小さい部品を組み合わせて大きい部品を作る、という並べ方をします。

    アトミックデザインの5階層を並べた図解。原子のボタンから分子の検索フォーム、有機体のヘッダー、テンプレート、ページへ組み上がる順番を画面例で示した図
    アトミックデザインの5階層
    • アトム(原子):それ以上分けられない最小の部品。ボタン、ラベル、入力欄1つ
    • モレキュール(分子):原子を組み合わせた小さなまとまり。入力欄+ボタンの検索フォーム
    • オーガニズム(有機体):分子を組み合わせた大きな区画。ロゴ+メニュー+検索フォームのヘッダー
    • テンプレート:区画を並べたページの骨格。中身はまだ仮
    • ページ:テンプレートに実際の文章と写真を入れた完成形

    便利なのは、直す場所が1か所に決まるところです。ボタンの色を変えたければ原子を直す。すると、その原子を使っている分子も区画もページも全部変わります。

    ただ、5階層をそのまま当てはめようとすると必ず詰まります。「これは分子? 有機体?」で会議が止まるからです。
    階層の名前は目的ではありません。小さい部品から積む、直す場所を1つにする。この2つだけ持ち帰れば十分です。

    ひとりでも作れる小さいデザインシステム

    大きな仕組みは会社の話に聞こえますが、個人の制作こそ効きます。決める人が自分ひとりなので、ブレやすいからです。

    作るのは1ページで足ります。Figmaでも、紙でも構いません。最初に決めるのはこの4つだけです。

    ひとり版で決める4つ
    • 色を3色:主役の色、文字の色、背景の色。足すのは、どうしても必要になってから
    • 文字を3サイズ:見出し、小見出し、本文。ここへ太さの差も含める
    • 余白を4段階:8・16・24・40のように、1つの単位の倍数でそろえる
    • ボタンを3種類:主役、補助、文字だけ。押せない状態も1つ描いておく

    この1ページがあると、次の制作の最初の30分が消えます。しかも作品どうしの見た目がそろうので、ポートフォリオ全体の印象も上がりますよ。

    ミニ実践:公開されているデザインシステムを1つ読む

    30分ほど。読むだけの練習です。世の中のデザインシステムは公開されているものが多いので、そのまま教材になります。

    1. 公開されているものを1つ選ぶ。日本語で読むならデジタル庁のデザインシステム、Ameba Spindle、SmartHR Design System、一休のIKYU Design Guidelineあたりが読みやすいです
    2. まず原則のページを読む。何を大事にすると宣言しているか、1行でメモする
    3. 次にボタンのページを開く。種類、大きさ、状態が何個あるか数える
    4. 「使わない場面」の記述を探す。見つけたら、その理由をメモする
    5. 自分が最近作ったものを開いて、ボタンが何種類あるか数える。3種類を超えていたら、どれを消せるか考える

    ボタン1つに絞って読むのがコツです。全体を読もうとすると量に負けます。同じやり方で、次は入力欄、その次は色。1回1テーマで足ります◎

    よくある質問

    デザインシステムとは何ですか?

    そのサービスで使う色・文字・部品と、その使い方をひとまとめにした仕組みです。判断の基準(原則)、数値で決めた土台(スタイル)、貼って使える部品(コンポーネント)、いつ使うかの説明の4つでできています。目的は、作る速さを上げることと、誰が作っても同じ見た目にすることです。

    デザインガイドラインとデザインシステムの違いは何ですか?

    ガイドラインはルールを書いた文書で、人が読んで守ります。デザインシステムは、そこへ実際に使える部品と更新の仕組みを足したものです。部品を使えば自然にそろうので、記憶に頼らずに統一できます。ガイドラインはデザインシステムの一部だと考えてください。

    デザインシステムで有名なものはありますか?

    海外だとGoogleのMaterial Design、AppleのHuman Interface Guidelines、ShopifyのPolarisあたりが有名です。日本語で読めるものなら、デジタル庁のデザインシステム、AmebaのSpindle、SmartHR Design Systemが参考になります。どれも公開されているので、そのまま教材として読めます。

    個人の制作でも作ったほうがいいですか?

    1ページ分だけ作ってください。色3色、文字3サイズ、余白4段階、ボタン3種類。これだけで、次の制作の立ち上がりが速くなります。ひとりの制作はブレやすいので、決めた紙が1枚あるだけで作品どうしの見た目がそろいます。大きな仕組みは、必要になってから足せば間に合います。

    次に学ぶこと

    デザインシステムは、毎回決めないための仕組み。中身は原則・スタイル・コンポーネント・使い方の説明の4つ。アトミックデザインは、部品を小さい順に積んで直す場所を1つにする考え方です。まずは色3色・文字3サイズ・余白4段階・ボタン3種類の1ページから始めてください。

    次はデザイントレンドの型(フラット・マテリアル・ミニマル)へ。今回出てきたMaterial Designが、どんな考え方の上に立っているか分かります。

    色や文字の決め方そのものはトンマナ(トーン&マナー)で扱っています。全体の並びはデザイン基礎コースの目次から確認してくださいね。

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