「フラットデザインで作ってください」と言われて、何をどう変えればいいのか分からなかった。デザインを始めた人からいちばん多く聞く戸惑いです。
フラット・マテリアル・ミニマル。名前だけ見ると流行の話に聞こえますが、中身は「影と質感をどこまで使うか」というルールの違いです。ルールなので、覚えれば使い分けられます。
この記事では実務でよく指定される5つの型を、判断の順番どおりに整理します。読み終えたら、参考サイトを見たときに「これはマテリアルだ」と言葉で分類できるようになりますよ◎
デザインの型は5つ覚えれば足りる
Webデザインの見た目には、業界で名前がついた型がいくつかあります。実務で指定されるのは、だいたい次の5つです。

- フラットデザイン:影も立体感も使わない。色と形だけで作る
- マテリアルデザイン:フラットに「紙の重なり」を足したもの。影を意味づけて使う
- ミニマルデザイン:要素の数そのものを減らす。余白が主役
- ダークモード:暗い背景で組む配色の型
- パララックス:スクロールで奥行きを見せる動きの型
ここを分けずに「トレンド」とひとまとめにすると混乱します。まず3つの見た目のルールから見ていきましょう。
フラットデザイン:影と質感をやめる
フラットデザインは、立体的な装飾を全部やめて、平面のまま作るデザインです。影・グラデーション・光沢・テクスチャを使いません。残るのは色と形と文字だけになります。
その前に主流だったのは、現実のものをまねた見た目でした。ボタンには押せそうな影がつき、メモアプリの背景は紙の質感、ゴミ箱アイコンは金属の光沢。こういう作りをスキューモーフィズム(現実の物の見た目をまねること)と呼びます。

フラットに変わった理由は3つあります。
- 画面の数が増えた:スマホからPCまで幅が変わっても、平面なら崩れない
- 表示が速い:影や質感の画像を読み込まないぶん軽い
- 作る量が減った:色を変えるだけで済むので、更新が楽になる
ただし弱点もあります。影がないと、どれがボタンで、どれがただの飾りか分かりにくくなるんです。押せると気づいてもらえないボタンは、存在しないのと同じですよね。
フラットで作るときは、押せるものの見分けを色と形で作ってください。ボタンの色は1色に固定する、角丸の形はボタンだけに使う、文字色を本文と変える。この3つを守ると、影がなくても迷わせません💡
マテリアルデザイン:影に意味を持たせる
マテリアルデザインは、Googleが2014年に公開したデザインの指針です。フラットの弱点をつぶすために、影を「紙の重なり」として復活させました。
考え方はシンプルです。画面の上に薄い紙が何枚も重なっていると考えて、手前にある紙ほど濃い影を落とす。影の濃さがそのまま「奥行き」を表します。だからボタンやカードは浮いて見えて、押せると分かります。Googleマップやスマホの標準アプリを見ると、ボタンやカードが薄く浮いて見えますよね。あれがこの影です。
フラットとの違いは、影を飾りに使うか、情報に使うかです。マテリアルの影は雰囲気づくりではありません。「これは手前にある=操作できる」を伝えるための記号です。
| フラット | マテリアル | |
|---|---|---|
| 影 | 使わない | 奥行きを示すために使う |
| グラデーション | 使わない | 控えめに使う |
| 操作できる合図 | 色と形で作る | 影の濃さで作る |
| 動き | 指定なし | 押した位置から広がるなど細かく決まっている |
| 向いている場面 | 企業サイト・LP | アプリ・管理画面 |
操作が多いもの、たとえばアプリや会員ページはマテリアル寄りが安全です。見せるのが主役のLPや企業サイトはフラットで軽くまとめる。この分け方でだいたい合います。
- GoogleのMaterial Design:影の段階、色の作り方、押したときの反応まで決めてあります。マテリアルで作るなら本家を見るのが早いです
- AppleのHuman Interface Guidelines:iPhoneやMacの画面を作るときの決めごと。押せる範囲の最小サイズも書いてあります
- IBMのCarbon/MicrosoftのFluent:どちらもダークモードの配色が一式そろっています。暗い背景の色を自分で決めるのが不安なときに見ます
3つとも無料で読めます。全部を覚える必要はありません。あなたの制作で迷った項目、たとえば影の濃さやボタンの高さだけを開いて、決まっている数字を借りてください。
ミニマルデザイン:要素の数を減らす
ミニマルデザインは、装飾ではなく要素そのものを減らす考え方です。フラットが「影をやめる」なら、ミニマルは「置くものを減らす」。減らした結果、余白が広く残ります。無印良品のサイトが分かりやすい例で、写真と短い言葉だけが置いてあって、飾りがほとんどありません。
Googleの検索トップも同じ考え方です。ロゴと入力欄しかありません。置くものを減らしたぶん、何をする画面かが一瞬で伝わります。
初心者がミニマルでつまずくのは、減らすところを間違えたときです。飾りを消すのは正解ですが、説明の文章まで消すと「きれいだけど何のサイトか分からない」で終わります。
減らす順番は、飾り → 色 → 写真 → 文字。文字はいちばん最後です。
余白の取り方そのものは余白の使い方で数字まで決めています。ミニマルで作るなら先にそちらを読んでおくと早いですよ。
ダークモードとパララックス
残り2つは、見た目のルールとは層が違います。どの型と組み合わせても使えます。
ダークモード:暗い背景で組む
ダークモードは背景を暗くした配色です。暗い部屋でまぶしくない、有機ELの画面なら電池が長持ちする、といった利点があります。YouTubeにも切り替えがあるので、同じページで明るい配色と見比べられます。
作るときの注意は2つです。
1つ目は、背景を真っ黒(#000000)にしないこと。真っ黒と白文字は差が強すぎて、文字がにじんで見えます。#121212前後の濃いグレーにすると読みやすくなります。
2つ目は、明るい配色をそのまま反転させないこと。暗い背景の上では彩度(色の鮮やかさ)の高い色が浮いて痛く見えます。色を少し淡くして、彩度を落としてください。
パララックス:スクロールで奥行きを出す
パララックスは、スクロールしたときに背景と手前の要素を違う速さで動かす表現です。奥のものがゆっくり動くと、人は奥行きを感じます。
印象は強いのですが、代償も大きい表現です。読み込みが重くなり、スマホでは動きがカクつきます。動きに酔う人もいます。
使うなら、ページの最初の1画面だけにとどめてください。全画面に入れると、読みたい人が読めないページになります。
どの型を選ぶかの決め方
型は好みで選びません。サイトの目的と、操作の多さで決まります。
| 作るもの | 合う型 | 理由 |
|---|---|---|
| アプリ・管理画面 | マテリアル | 操作できる場所がひと目で分かる |
| 企業サイト・サービス紹介 | フラット | 軽くて、更新しても崩れない |
| ブランドサイト・作品集 | ミニマル | 写真と言葉を主役にできる |
| 開発者向けサービス | ダークモード併用 | 長時間見る人が多い |
| キャンペーンLP | パララックスを一部だけ | 最初の1画面で引きつけたい |
迷ったらフラットで始めてください。いちばん失敗が少なく、あとからマテリアル寄りに影を足すこともできます。逆に、装飾を多く作ったあとで削るのは手戻りが大きいです。
ミニ実践:サイトを3つ分類する
型を覚える早道は、実物を分類することです。10分で終わります。用意するのはブラウザだけ。
- スマホかPCで、ふだん使っているサイトを3つ開く。ニュース・通販・アプリのように種類を散らすと差が見えます
- 1つ目のサイトでボタンを1つ選び、影がついているかを見る。影がなければフラット寄り、あればマテリアル寄りです
- 次に使われている色を数える。3色以内で余白が広ければミニマル寄りです
- スクロールして、背景と手前の動く速さが違うかを見る。違えばパララックスです
- 3つのサイトで同じ手順をくり返し、それぞれ「フラット/マテリアル/ミニマル」のどれに近いか名前をつける
- 最後に、なぜその型を選んだのか自分の言葉で1行書く。「操作が多いからマテリアル」のように理由まで書くのがポイントです
判断に迷ったサイトがあれば、それは複数の型を混ぜています。混ぜること自体は問題ありません。どこで混ぜているかが見えれば、自分でも同じことができます。
分類できたか、次のチェックリストで確認してみてくださいね。
- 3つのサイトそれぞれに型の名前をつけられた
- ボタンの影の有無を根拠に説明できた
- 使っている色数を数えた
- その型を選んだ理由を1行で書けた
やってしまいがちな失敗
フラットなのに押せる場所が分からない
影を消したあと、ボタンとただの色つき四角が同じ見た目になっている状態です。
直し方は、ボタンだけに使う色と形を1つ決めること。ページ内で同じ見た目が2つの意味を持たないようにします。
影を雰囲気で足してしまう
「なんとなく寂しいから」と影を全要素に足すと、どれが手前か分からなくなります。
直し方は、影の段階を2つまでに絞ること。浮いているもの(ボタン・カード)と、平らなもの(背景・本文)の2階層で足ります。
流行を理由に型を選ぶ
「今はこれが流行だから」で決めると、提案の場で説明できません。
直し方は、目的から選ぶこと。「操作が多いから影で示す」と言えれば、相手も納得します。
よくある質問
次に学ぶこと
最後に整理します。
- フラット:影と質感を使わない。押せる合図は色と形で作る
- マテリアル:影を奥行きの記号として使う。操作の多い画面向き
- ミニマル:要素の数を減らす。残したものの質がそのまま出る
- ダークモード:真っ黒を避けて#121212前後、彩度は落とす
- パララックス:最初の1画面だけにとどめる
型を決めたら、次はそれをページ全体で崩さずに使い続ける仕組みが要ります。デザインシステムの基本で、色や部品のルールをまとめる方法を見ていきましょう。使いやすさの観点から型を選び直したいときはUIとUXの違いもあわせてどうぞ。
ここまでの並びはデザイン基礎コースの目次から確認できます。
