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シズル感の出し方|食品バナーでおいしそうを作る手順

第5章 装飾とビジュアル表現 読了目安 8分

INDEX目次

    同じハンバーガーの写真なのに、片方はおいしそうで、片方はただの記録写真。この差は何だろう、と思ったことはありませんか?

    その差を作っているのがシズル感です。食品広告の世界では昔から使われている言葉で、写真の腕だけでなく、選ぶカット・寄り方・色の作り方・文字の置き方で決まります。
    このレッスンでは、シズル感を「センスのある人が出すもの」から「手順で足せるもの」に変えます。食品バナーを1枚作るところまで、順番に見ていきましょう。

    もくじ

    シズル感が指しているもの

    シズル感は、見ただけで味やにおい、温度が想像できる状態を指します。おいしそう、みずみずしい、熱そう、冷たそう。この「〜そう」が想像できれば、シズル感があります。

    もとは英語のsizzleで、肉が焼けるときの「ジュージュー」という音を表す言葉です。シズルだけで使うこともあり、広告の現場では「シズルカット」「シズル寄り」のように言います。音から来た言葉なので、対象は味覚だけではありません。聴覚や触覚まで含めて、写真1枚から五感を呼び起こすのがシズル感です。

    大事なのは、きれいな写真とおいしそうな写真は別物だということ。整った引きの写真より、少し崩れた寄りの写真のほうが食べたくなります。作る側は、きれいさよりも食欲を優先します。

    シズル感を作る5つの手がかり

    写真の中に、次の要素が1つでも入っているかを確認してください。何もなければ、加工でどうにかするより撮り直したほうが早いです。

    手がかり具体例伝わる感覚
    湯気・煙ラーメン、コーヒー、焼き肉熱さ・できたて
    水滴・氷ビール、ペットボトル、野菜冷たさ・鮮度
    照り・つや照り焼き、パンの焼き色、あん味の濃さ
    断面・とろみチーズが伸びる、卵が流れる食感
    動きと人の手持ち上げる、注ぐ、はしで割る今まさに食べる感じ

    強いのは「動きと人の手」です。皿に載った完成品より、持ち上げてチーズが伸びている瞬間のほうが、見る人は自分が食べる姿を想像します。1枚しか使えないなら、この形を狙ってください💡

    シズル感を作る5つの手がかり(湯気・水滴・照り・断面・動き)と、それぞれが伝える感覚を並べた図解

    撮り方で決まる部分

    スマホでも十分できます。変えるのは道具ではなく、光と距離と角度の3つです。

    光は横か斜め後ろから当てる

    正面から光を当てると、つやも影も消えて平らな写真になります。窓を横か斜め後ろに置くと、表面のつやが光り、手前に影が落ちて立体感が出ます。
    逆光気味にすると、湯気や飲み物の透明感がよく写ります。暗くなった手前側は、白い紙を1枚置いて光を返せば十分です。

    寄る。引きで撮らない

    テーブル全体が写った写真からは、味が想像できません。皿の一部が切れるくらいまで寄ると、質感が画面を占めてシズル感が出ます。
    目安は、料理が画面の7割以上。バナーで使うなら、さらにトリミングしても崩れないように、撮影時点で寄っておくのが安全です。

    同じ料理を引きで撮った写真と寄って撮った写真を並べ、寄ると質感が画面を占めてシズル感が出ることを示した図解

    角度は料理ごとに変える

    見せたいもの撮る角度
    高さのあるもの(ハンバーガー、パフェ、ビール)目線と同じ高さから
    断面や盛りつけ(丼、パスタ、ピザ)斜め45度
    並べた見た目真上から

    迷ったら斜め45度にしておくと、大きく外しません。

    加工と組版で足す部分

    撮影で7割、加工で3割です。加工でやることは決まっていて、無料アプリでも足ります。

    • 彩度より先にコントラストを上げる。彩度から上げると、食材が作り物の色になります
    • ほんの少し暖色に寄せる。青みが残った料理写真は、それだけで冷めて見えます。冷たい飲み物だけは例外で、青みを残します
    • ハイライトを残す。つやの白飛びを消すと、照りまで消えます。明るさを下げるときは影側だけ
    • シャープをかけるのは主役だけ。全体にかけるとざらつきます

    文字を乗せるときは、おいしそうな部分を隠さないのが基本です。チーズが伸びている場所や湯気の上に文字を置くと、シズル感ごと消えます。文字は皿の外か、暗く落ちた背景側へ。どうしても重なるなら、写真を広げて余白を作ってください。

    食品以外のシズル感

    シズル感は食べ物専用の言葉ではありません。質感が購入の決め手になる商品なら、同じ考え方が使えます。

    • 化粧品:とろみ、伸び、肌にのせた瞬間のつや
    • 衣類:生地の織り目、風でふくらむ動き、毛足の影
    • 家具・雑貨:木目、金属の反射、手が触れている場面
    • 洗剤・日用品:泡立ち、水を弾く様子、汚れが落ちる瞬間

    共通しているのは、完成した状態より「途中」を撮ることです。置いてある商品ではなく、使っている最中を切り取ると、見る人は自分の手触りとして受け取ります。

    ミニ実践:シズル感のある食品バナーを1枚模写する

    30分ほど。無料のCanvaと、無料素材サイトの食品写真で進められます。

    1. 飲食チェーンの公式サイトかSNSから、おいしそうだと感じたバナーを1枚選ぶ
    2. 選んだ理由を、5つの手がかりのどれかで言葉にする(例:湯気と照りで熱さを出している)
    3. 似た構図の写真を無料素材から探す。同じ料理でなくてもいい。寄り方と角度をそろえるのが目的
    4. 元のバナーと同じサイズを作り、写真の位置・トリミング・文字の位置をまねて置く
    5. 写真だけ加工する。コントラスト → わずかに暖色 → 主役にシャープの順で、1つずつ効果を確認する
    6. 元のバナーと並べて縮小し、おいしそうに見えるほうがどちらかを判定する。負けていたら、加工ではなく写真の寄り方を変える

    負けた原因が「素材が違うから」で終わると、次につながりません。寄り・光の向き・文字の位置のどれで負けたのか、1つに絞って書き残してくださいね◎

    よくある質問

    シズル感とはどういう意味ですか?

    見ただけで味・におい・温度が想像できる状態のことです。語源は肉が焼ける音を表す英語のsizzle。湯気、水滴、照り、断面、動きといった手がかりが写り込むと、シズル感が生まれます。広告写真では「シズル」と短く呼ぶこともあります。

    スマホでもシズル感のある写真は撮れますか?

    撮れます。変えるのはカメラではなく光の向きです。窓を横か斜め後ろにして、正面からの照明を消してください。それだけでつやと影が出ます。あとは料理が画面の7割を占めるまで寄る。この2つで、道具の差はほぼ埋まります。

    加工でシズル感は足せますか?

    ある程度は足せますが、元の写真に手がかりが写っていないと限界があります。湯気も照りも動きもない写真は、彩度を上げても色が濃くなるだけです。加工で足すなら、コントラストを上げて、わずかに暖色へ寄せて、主役だけシャープにする。この3手までにとどめてください。

    食べ物以外でもシズル感は使いますか?

    使います。化粧品のとろみ、生地の織り目、洗剤の泡立ちなど、質感が決め手になる商品では同じ言葉で通じます。撮り方の考え方も共通で、置いてある完成品ではなく、使っている途中を切り取ると質感が伝わります。

    次に学ぶこと

    シズル感は、湯気・水滴・照り・断面・動きの5つの手がかりで作ります。撮影で7割、加工で3割。文字はおいしそうな場所を避けて置く。ここまでが今回の内容です。

    写真の上に置く装飾で迷ったら、あしらいの引き出しに戻ってください。写真が強いときほど、あしらいは減らすのが正解です。

    次の章はユニバーサルデザインから始まります。「誰が見ても伝わるか」を確認する回で、バナーを人に届けるうえで欠かせない視点です。章ごとの並びはデザイン基礎コースの目次で確認できます。

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