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校正の赤字が読めるようになる現場用語(テレコ・ママ・トルツメ)

第7章 データと現場の知識 読了目安 7分

INDEX目次

    「ここトルツメで」と言われて、手が止まったことはありませんか?

    制作の現場では、赤字(校正で入れる修正の指示のこと)も口頭の指示も独特の言葉で飛んできます。テレコ・ママ・トルツメあたりが代表です。意味を知らないと、直す前に「それ何ですか」で止まってしまいます。
    この用語は難しくありません。数も多くないので、一度覚えれば一生使えます。

    ここでは校正の赤字で出る言葉、校正が何往復するのかという流れ、入稿まわりの言葉を順に説明します。入稿は、印刷所へ完成データを渡すことです。読み終わったら、赤字が入ったPDFを見ても迷わなくなりますよ◎

    もくじ

    校正の赤字は3つのグループで覚える

    校正用語を1つずつバラバラに暗記すると、似た言葉で混乱します。「消す」「触らない」「入れ替える」の3グループに分けると、一気に整理できます。

    グループ用語ひとことで言うと
    消すトル/トリ、トルツメ要素を削除する
    触らない・戻すママ、イキ原稿のまま、または赤字を取り消す
    入れ替えるテレコ順番が逆になっている

    赤字を受け取ったら、まずどのグループの話か見分けます。それだけで、ほとんどの指示は読めます。

    ちなみに校正の記号はJIS(日本産業規格)で決まっていて、印刷会社も出版社も同じ書き方で赤字を入れます。会社ごとに違う言葉を覚え直す心配は要りません。

    トルツメ・ママ・テレコの赤字がどう入るかを実例で示した図。原稿への赤字の書かれ方と、直したあとの結果を並べている

    消す指示:トル/トリ・トルツメ

    トル(トリ)は「削除して」という指示です。消したい文字を線で消して、余白に「トル」と書きます。丸で囲んであるのは、そこが指示であって本文ではない印です。

    トルツメは、削除したあと空いた分を詰めるところまで含みます。「!」を1文字トルツメすれば、後ろの文字が1文字ぶん前に来ます。

    対になる言葉がトルアキです。削除はするけれど、空いたところはそのまま空けておく指示です。ロゴまわりの余白を守りたいときなどに出ます。

    「消す」の3つの違い
    • トル:消す(詰めるかどうかは書いていない)
    • トルツメ:消して詰める
    • トルアキ:消すが空きは残す
    トル・トルツメ・トルアキの違いを比べた図。同じ「消す」指示でも、空いたところを詰めるか残すかが変わる

    「トル」だけの赤字が来たら、詰めるかどうかを確認してください。文章なら詰めるのが普通ですが、レイアウトの要素だと詰めると全体が動きます。ここは勝手に決めないほうが安全です。

    触らない指示:ママ・イキ

    この2つは新人がいちばん混ぜやすいところです。どちらも「直さない」ですが、直さない理由が違います。

    ママは「原稿のとおりにして」という意味です。誤字に見えるけれど正しい固有名詞、わざと崩した表記のときに使います。「原文ママ」という書き方も同じです。校正する側が「気づいたうえで直さない」と伝える言葉なんですね。

    イキは「さっきの赤字を取り消して、元を生かして」という意味です。一度「トル」と入れたあとで気が変わったときに、赤字の上に「イキ」と書きます。

    • ママ:原稿が正。最初から直さない
    • イキ:入れた赤字をなかったことにする。元に戻す

    見分け方は「赤字が先にあるかどうか」です。赤字の上に書いてあればイキ、原稿の横にぽつんと書いてあればママ。迷ったら、消し跡を探してください。

    入れ替える指示:テレコ

    テレコは「入れ違いになっている」「入れ替えて」という意味です。もともとは芝居の言葉で、今は制作でも印刷でも広く使います。

    テレコが出る場面は、だいたい決まっています。

    テレコが起きやすい場面
    • 2枚組のバナーで、AパターンとBパターンの画像が逆
    • 担当者名と会社名の並びが逆
    • 日付と時間の順序が原稿と逆
    • ファイル名の連番と中身がずれている

    「テレコになってます」と言われたら、片方だけ直して終わりにしないでくださいね。入れ違いなので、直す対象はいつも2つあります。片方だけ直すと、同じものが2つ並びます。

    覚え方
    テレコ=2つが逆。トルツメ=消して詰める。ママ=原稿が正。イキ=赤字を取り消す。この4つで、赤字の8割は読めます。

    校正は何往復するのか

    用語と同じくらい大事なのが、校正の流れです。校正紙のやり取りには回数ごとの呼び名があって、メールではこの呼び名だけで話が進みます。

    呼び名意味
    初校最初に出す校正紙。赤字がいちばん多く入る
    再校赤字を直して2回目に出す校正紙。三校、四校と続くこともある
    校了直しがなくなり、「これで刷ってよい」と確定した状態
    責了責任校了の略。残った小さな直しを印刷所に任せて校了にすること
    下版校了したデータを印刷の工程に回すこと

    基本の流れは初校 → 再校 → 校了(または責了)→ 下版です。「再校で校了にしたい」と言われたら、次の戻しで直しをゼロにしたい、という意味です。

    文字の直しとは別に、色を確かめる色校正という工程もあります。本番と同じ印刷機と紙で刷って確かめるのが本機校正、プリンタ出力などで色の傾向だけを見るのが簡易校正です。色を厳密に合わせたい仕事では本機校正を選びます。

    入稿データで言われる言葉

    入稿のデータを作る段階では、この4つがよく出ます。印刷所の入稿ガイドにも必ず書いてある言葉です。

    • トンボ:仕上がりサイズに断裁する位置を示す目印。データの四隅と辺の中央に付けます
    • 塗り足し:断裁のわずかなズレに備えて、絵柄を仕上がりの外側へ3mm伸ばしておく部分
    • 裁ち落とし:紙のふちまで絵柄がある仕上がりのこと。塗り足しがないと、ふちに白い線が出ます
    • アウトライン化:文字を図形のデータに変換すること。相手の環境に同じフォントがなくても、字形が変わらなくなります

    4つとも、断裁とフォントのずれに備えるための言葉です。

    打ち合わせの会話で出る言葉

    赤字には出ないけれど、会話で当たり前のように出る言葉もあります。ここも先に知っておくと、初日から話が通じます。

    注意書き/約款

    広告の下のほうに入っている、小さい文字のかたまりです。キャンペーンの条件、対象外の但し書き、料金の内訳などが入ります。約款と呼ぶこともあります。

    やっかいなのは、この文字量が制作の途中で増えることです。法務の確認が終わると、2行のつもりが6行になったりします。先に場所を広めに取っておくと、あとから主役の絵柄を縮める事態を避けられます。

    ガショリ/ガショる

    画像が粗い状態を指します。「この写真ガショってる」と言われたら、拡大しすぎてピクセルが目立っている、という指摘です。ガショリと名詞で言う人もいます。

    原因はほぼ1つで、元の画像が小さいのに大きく使っていることです。直し方は、元データを大きいサイズでもらい直すこと。引き伸ばした画像は、あとから加工しても戻りません。

    ワイプ・ジャック・コピペ

    ワイプは、人物を小さく丸く抜いて隅に重ねる表現です。テレビ画面の隅の小窓から来た言葉で、「ここにワイプで顔入れて」のように使います。
    ジャックは、広告の枠をまとめて押さえることです。駅の壁一面なら駅ジャック。1枚で強い絵より、並べたとき1つの塊に見える設計にします。
    コピペはコピー&ペーストの略です。前の案件のテキストを流用して、社名や日付が前のまま残る事故を「コピペミス」と呼びます。

    流用したデータからは、まず固有名詞・日付・金額の3つを探してください。事故はほぼこの3つで起きます💡

    ミニ実践:ふつうの指示を現場用語に書き換える

    覚えたかどうかは、自分で言い換えてみると分かります。次の5つを、現場用語1語で言い換えてみてください。紙もツールも要りません。

    1. 「この『!』を消して、後ろの文字を前に詰めてください」
    2. 「会社名と担当者名の並びが逆です」
    3. 「誤字に見えますが原稿どおりです。直さないでください」
    4. 「さっき消してと言いましたが、やっぱり残してください」
    5. 「この飾りは消して、空いたところはそのまま空けておいてください」

    答え合わせです。

    1. トルツメ
    2. テレコ
    3. ママ
    4. イキ
    5. トルアキ

    5問とも即答できたら、赤字は読めます。詰まったところだけ、上に戻って読み直してくださいね。

    用語の早見表

    このページで出た言葉をまとめます。作業中に迷ったら、ここだけ見返してください。

    用語意味出る場面
    トル/トリ削除する赤字
    トルツメ削除して空いた分を詰める赤字
    トルアキ削除するが空きは残す赤字
    ママ原稿のままにする赤字
    イキ入れた赤字を取り消して元に戻す赤字
    テレコ2つが入れ違いになっている赤字・会話
    初校・再校1回目・2回目に出す校正紙校正の流れ
    校了・責了直し終わり。責了は残りを印刷所に任せる校正の流れ
    下版校了したデータを印刷の工程に回す校正の流れ
    色校正刷る前に色を確かめる工程。本機校正と簡易校正がある校正の流れ
    トンボ断裁位置を示す目印入稿
    塗り足し仕上がりの外側へ3mm伸ばす絵柄入稿
    裁ち落とし紙のふちまで絵柄がある仕上がり入稿
    アウトライン化文字を図形のデータに変換する入稿
    注意書き/約款広告の下に入る小さい説明文入稿
    ガショリ/ガショる画像が粗い状態会話
    ワイプ隅に小さく重ねる別画面会話
    ジャック広告枠をまとめて押さえる会話
    コピペコピー&ペースト。流用の事故名としても使う会話

    よくある質問

    校正記号は全部覚えないとダメですか?

    全部は要りません。実務で毎日出るのは、トル・トルツメ・テレコ・ママ・イキの5つくらいです。記号の一覧表は印刷の現場向けに細かく作られていて、Webの制作だと出番のない記号もたくさんあります。まず5つ、あとは出会ったときに1つずつ足していけば間に合います。

    「ママ」と「イキ」の違いがまだ混ざります

    赤字が先にあるかどうかで見分けます。誰かが入れた赤字の上に書いてあれば「イキ」で、その赤字を取り消す指示です。原稿の横に単独で書いてあれば「ママ」で、最初から直さない指示です。
    言い換えると、イキは「やっぱり元のまま」、ママは「これで合っている」です。

    赤字の意味が分からないとき、聞いてもいいですか?

    聞いてください。用語を知らないより、勘で直したほうが事故になります。
    聞き方にコツがあって、「分かりません」ではなく「この赤字は、詰めるところまでやる理解で合っていますか」と確認の形にします。自分の解釈を先に出すと、相手も一言で答えられます。

    用語は会社ごとに違いますか?

    ここで挙げた言葉はどこでも通じます。ただし呼び方の揺れはあります。ガショリをガショる、注意書きを約款や注釈と呼ぶなど、言い方が変わるだけです。
    意味さえ分かっていれば、揺れは自然に吸収できます。新しい言い回しに出会ったら、その場でメモしておくと早く慣れます。

    次に学ぶこと

    今回のまとめです。

    • 赤字は「消す・触らない・入れ替える」の3グループで覚える
    • トルツメは詰めるまで、トルアキは空きを残す
    • ママは原稿が正、イキは赤字の取り消し
    • テレコは入れ違い。直す対象はいつも2つ
    • 流れは初校→再校→校了・責了→下版。色は色校正で確かめる
    • 流用データは固有名詞・日付・金額を最初に確認する

    用語が分かると、赤字を受け取ってから直し終わるまでが短くなります。あとは実際の流れの中で使うだけです。

    次は制作の流れ(ラフ→カンプ→フィックス)を読んでみてください。赤字がどの工程で入るのかが分かると、今回の言葉が実際の場面と結びつきます。
    ガショリの話が気になった方は解像度とピクセルへ。粗くなる仕組みを数字で説明しています。

    全体の並びはデザイン基礎コースの目次から確認できます。

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