「なんか物足りない」「シンプルというより、手抜きに見える」。バナーや資料を作っていて、そう感じたことはありませんか?
そこで足りていないのがあしらいです。文字と写真を置いただけの状態から、もう一歩仕上げるための小さな装飾のこと。プロが作ったバナーとの差は、たいていここで開きます。
このレッスンでは、あしらいの意味と種類を整理して、「どこに何を足すか」を自分で決められるところまで持っていきます。足しすぎて散らかったときの戻し方も書きますね。
あしらいとは、デザインを仕上げる小さな装飾のこと
あしらいは、主役ではない装飾要素をまとめて呼ぶ現場の言葉です。線、図形、背景の模様、アイコン、写真のフチ。「情報そのもの」である文字と写真を除いた、画面に置くもの全部があしらいに当たります。
語源は「あしらう」、つまり添える・配置するという日本語です。だから「あしらわれたデザイン」は、装飾を添えて仕上げてあるデザインという意味になります。人を軽く扱うほうの「あしらう」とは別の使い方なので、批判の言葉ではありません。
デザイナー同士だと「ここ、あしらい足しておいて」「あしらいが強すぎない?」のように会話に出てきます。英語のdecorationに近い言葉ですが、現場では日本語のまま使います。
あしらいの役割は4つしかない
種類から覚えようとすると数が多くて疲れます。先に役割から入ると、選ぶのが一気に速くなりますよ◎
| 役割 | やること | よく使うあしらい |
|---|---|---|
| 目立たせる | 主役のまわりに差を作る | 囲み枠・マーカー・下線・帯 |
| 区切る | 情報のグループを分ける | 罫線・背景の色分け |
| つなぐ | 読む順番を作る | 矢印・番号・点線 |
| 雰囲気を出す | トンマナを伝える | 紙の質感・ドット・手描きの線 |
4つ目の「トンマナ」は、見た目の方向性という意味です。かわいい・かっこいい・落ち着いた、といった全体の空気を指します。
身近な例で見ると分かりやすいですよ。YouTubeのサムネイルの右下にある、再生時間の黒い小さな帯。あれが「目立たせる」あしらいです。逆に無印良品のパッケージは、線も帯もほとんど使わず、文字と余白だけで作ってあります。あしらいを足さない判断も、選択肢の1つです。

あしらいの引き出しを増やす
線と枠
いちばん失敗が少ないグループです。細い罫線、二重線、点線、角丸の囲み枠、片側だけの縦線。
コツは太さを1〜2種類に絞ること。1pxの罫線と4pxの下線が混ざっているだけで散らかって見えます。囲み枠を使うなら、角丸の数値も画面内で統一します。
図形と帯
丸、三角、斜めの帯、吹き出し、リボン。文字の下に色の帯を敷くだけで、主役がはっきりします。
斜めの帯は動きが出る反面、角度が2種類混ざると崩れます。角度は画面内で1つだけと決めてください。
文字まわり
マーカー風の下線、袋文字、影、英語の小さな添え文字、番号のバッジ。日本語の見出しの下に小さく英語を置く手は定番です。
ただし装飾する文字は1画面に1か所。見出しも小見出しも装飾すると、どちらが上位か分からなくなります。
背景と写真まわり
背景は、ドット、ストライプ、紙やノイズの質感、ゆるいグラデーション。写真まわりは、角丸、丸く切り抜く、フチをぼかす、四角いフレームで囲む。
背景の模様は主役の文字に重ならない濃さまで薄くします。目安は、目を細めて見たときに模様が消えるくらい💡
足す順番を決めておく
あしらいで失敗するのは、思いついた順に足すからです。順番を固定すると崩れません。
- 主役を1つ決める。あしらいは主役を助ける係なので、主役が決まらないうちは足さない
- 役割を選ぶ。目立たせる・区切る・つなぐ・雰囲気を出す、のどれをやりたいか言葉にする
- 1種類だけ足して、画面から3歩離れて見る。効いていなければ形を変える、効いていれば次へ
- 2種類目で止める。3種類目を足したくなったら、たいてい主役の設計に問題がある

やりがちな失敗と直し方
余白が寂しくて埋めてしまう
空いている場所に丸や線を置くと、情報のグループが読めなくなります。余白は余りではなく、分けるための道具だからです。
直し方は、置いたあしらいを消して、代わりに主役を大きくする。空白が気になるのは、たいてい主役が小さいときです。
あしらいごとに色を増やす
線は青、帯はオレンジ、アイコンは緑。こうなると、どれが大事か伝わりません。
直し方は、あしらいの色を主役の色か無彩色のどちらかに寄せる。色数は増やさず、濃さだけで差をつけると落ち着きます。
形の粒度がそろっていない
角丸の枠と、直角のフレームと、手描きの丸が同じ画面に並ぶと、それだけで素人っぽく見えます。原因は、あしらい単体ではなく組み合わせです。
直し方は、角丸なら全部角丸、直線なら全部直線に寄せる。線の太さと角丸の数値をメモしておくと、次からぶれません。
ミニ実践:バナー1枚にあしらいを1つ足す
10分ほどでできます。使う道具は無料のCanvaでもパワーポイントでも構いません。
- 自分が前に作ったバナーを1枚開いて、複製する。片方はBefore用に触らない
- 複製したほうで、主役の文字を1つ決めて声に出す
- 4つの役割から1つ選ぶ。迷ったら「目立たせる」でいい
- 選んだ役割のあしらいを1種類だけ足す。帯を敷く、下線を引く、囲む、のどれか
- 2枚を並べて縮小表示にして、3歩離れて見る。主役が先に目に入るほうが正解
- 効いていなければ、あしらいの形ではなく大きさと余白を変えて、もう一度見る
Before/Afterを並べて残しておくと、次に迷ったとき自分の見本になります。1枚につき1種類しか足さないのが、この練習のいちばん大事なところです。
よくある質問
次に学ぶこと
あしらいは、主役を助けるための小さな装飾です。役割を4つに絞って、1画面に2種類まで。足す順番は、主役を決める → 役割を選ぶ → 1種類足して離れて見る。
次のレッスンはシズル感です。同じ「見た目の作り込み」でも、こちらは写真そのものをおいしそうに見せる話。食品や飲料のバナーを作るなら、あしらいより先に効きます。
ほかの章に進みたいときはデザイン基礎コースの目次から選んでくださいね。
