フォントの一覧を開いて、上から順にクリックしては戻る。気づいたら20分たっていた、なんてことありませんか?
迷う原因は、書体の分類を知らないまま1つずつ見ているからです。書体は大きく分けると4種類しかありません。分類が頭に入っていると、最初に種類を決めて、その中から選ぶだけになります。
このレッスンでは、書体とフォントの違い、セリフ体とサンセリフ体の見分け方、日本語の明朝体とゴシック体の関係まで扱います。読み終わったら、街の看板を見ただけで種類を言い当てられるようになりますよ。
書体とフォントの違い
まず用語を整理します。
書体(タイプフェイス)は、文字のデザインそのものを指します。「この形で文字を作る」という設計のことです。
フォントは、その書体を実際に使えるようにしたデータを指します。パソコンにインストールする側です。
もともとは活版印刷(金属の文字を並べて紙に刷る、昔の印刷)の言葉です。同じ書体でも、10ポイントの活字の一式と12ポイントの一式は別のフォントとして数えました。書体が設計図、フォントが現物という関係です。
セリフ体とサンセリフ体
欧文書体の分類は、この2つを覚えれば大半が片付きます。見分けるポイントは、文字の先端です。
セリフは、文字の線の端についている小さな飾りです。Tの横棒の両端が下に少し伸びていたり、Iの上下に短い横線がついていたり。この飾りがある書体をセリフ体と呼びます。TimesやGaramondが代表です。
サンセリフの「サン(sans)」はフランス語で「〜がない」の意味です。つまりセリフのない書体で、線の太さが一定で先端に飾りがありません。サンセリフ体と呼び、HelveticaやArialが代表です。
身近なところで見比べられます。スマホの画面に出る英字、YouTubeやInstagramのボタンの文字は、ほとんどがサンセリフ体です。いっぽう洋書や英字新聞の本文はセリフ体が中心です。手元の画面と紙を並べると、先端の飾りの有無がすぐ分かります。
印象は次のように分かれます。
| セリフ体 | サンセリフ体 | |
|---|---|---|
| 先端の飾り | ある | ない |
| 線の太さ | 太い部分と細い部分がある | ほぼ一定 |
| 印象 | 伝統的・落ち着いた・格式 | 現代的・すっきり・親しみ |
| 得意な場面 | 長い文章、紙の本、高級感を出したいとき | 画面の文字、小さい文字、看板 |
| 代表 | Times、Garamond | Helvetica、Arial |
セリフが長文で読みやすいのは、飾りが横方向のつながりを作って、目線が次の文字へ流れやすくなるからです。紙の本の本文にセリフ体が多いのは、この理由があります。
日本語の明朝体とゴシック体
日本語にも同じ対立があります。明朝体がセリフ体、ゴシック体がサンセリフ体に対応します。
明朝体は、横線が細く縦線が太く、横線の右端に三角のふくらみ(ウロコ)があります。新聞や小説の本文がこれです。落ち着いた、真面目な印象になります。
ゴシック体は、縦も横もほぼ同じ太さで、ウロコがありません。駅の案内表示やスマホの画面がこれです。遠くからでも読みやすく、小さくしてもつぶれません。

- 明朝体:新聞や小説の本文、化粧品や和菓子のパッケージ
- ゴシック体:駅の案内表示、LINEやInstagramの画面、コンビニの値札
- 同じ「読ませる文字」でも、長く読むか一瞬で見るかで選び分けている
迷ったときの判断は単純です。
- 長く読ませる文章(記事本文・書籍・報告書)→ 明朝体
- 短く目に入ればいい文字(見出し・ボタン・看板・バナー)→ ゴシック体
- 画面で小さく表示する文字 → ゴシック体
Webの本文は、10年前ならゴシック体一択でした。今は画面がきれいになったので、明朝体の本文も読めます。ただし小さい文字や細い明朝体は、見る端末しだいでかすれます。本文で使うなら太さを1段上げてください。フォント名の後ろに付くRegular(標準)をMedium(中太)に変えるだけです。
この4分類で足りる
ここまでの4つに手書き系と装飾系を足すと、書体の種類はこう整理できます。
| 種類 | 特徴 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 明朝体 | 横が細く縦が太い。ウロコあり | 長文・落ち着いた印象 |
| ゴシック体 | 太さが一定。ウロコなし | 見出し・画面・遠くから読む文字 |
| セリフ体 | 欧文。先端に飾りあり | 欧文の長文・格式を出したいとき |
| サンセリフ体 | 欧文。飾りなし | 欧文の見出し・画面の文字 |
| 手書き・装飾系 | 筆記体、丸文字、飾り文字など | ロゴや短いあしらいだけ |

フォントの一覧を見て迷うのは、この分類を通さずに個別のフォント名から選ぼうとするからです。先に「今回は日本語のゴシック体」と決めてしまえば、候補は一気に絞れます。具体的な選び方は次のレッスンで扱います。
ミニ実践:街で書体を採集する
今日の帰り道でできる課題です。道具はスマホのカメラだけ。
- 外に出て、看板・ポスター・商品パッケージを見ながら歩きます
- セリフ体(明朝体)を3つ撮影します。化粧品、和菓子、不動産、病院あたりに多く見つかります
- サンセリフ体(ゴシック体)を3つ撮影します。駅の案内、コンビニ、家電の広告に多く使われています
- 撮った6枚を並べて、1枚ずつ「なぜこの書体を選んだのか」を1行で書きます
- 1枚だけ選んで、頭の中で書体を入れ替えてみます。明朝体の化粧品広告をゴシック体にしたら、印象がどう変わるか
4と5が本番です。撮るだけだと記録で終わりますが、理由を言葉にすると自分の作品で使えるようになります。「高級感を出したいから明朝」「小さくても読ませたいからゴシック」。この言い換えができれば、書体選びで迷う時間が減ります◎
慣れてきたら、明朝体の中でも横線の細さが違うこと、ゴシック体にも角ばったものと丸いものがあることに気づきます。そこまで見えたら、分類の目は十分に育っています。
やってしまいがちな失敗
1つの作品で書体を3種類以上使う
書体を増やすと、まとまりが消えます。読む人は「なぜここだけ違うのか」を考えてしまいます。
直し方は、1作品につき書体は2種類まで。見出しと本文で分けるか、いっそ1種類にして太さと大きさで差をつけます。同じ書体の太字と細字を使い分けるほうが、別の書体を足すよりきれいにまとまります。
和文と欧文をそのまま混ぜる
日本語のフォントに入っている英数字は、おまけの扱いのことがあります。日本語部分はきれいなのに、英字だけ間延びして見えるのはこれが原因です。
直し方は、英数字だけ別のフォントを指定する。明朝体にはセリフ体、ゴシック体にはサンセリフ体を合わせると自然に見えます。
細い明朝体を小さく使う
細い明朝体を12px以下で使うと、横線が消えて読めなくなります。特にスマホで顕著です。
直し方は、小さい文字はゴシック体にするか、明朝体のまま太さを1段上げる。デザインツールの画面では読めても、実機で確認すると印象が変わります。必ずスマホで見てください。
よくある質問
次に学ぶこと
今回の要点をまとめます。
- 書体(タイプフェイス)は文字のデザイン、フォントはそのデータ。実務では区別しなくてよい
- セリフ=文字の先端の飾り。あるのがセリフ体、ないのがサンセリフ体
- 日本語では明朝体がセリフ体、ゴシック体がサンセリフ体に対応する
- 長く読ませるなら明朝体、一瞬で見せるならゴシック体
- 1作品につき書体は2種類まで
分類が分かったら、次はその中から1つを選ぶ番です。フォントの選び方で、印象から候補を絞る手順を扱います。同じ文面を3つのフォントで組んで比べる課題つきです。
フォントを決めたあとは、文字と文字の間の調整が待っています。文字詰めの基本で、タイトルが締まって見える調整を練習してください。コース全体の流れはデザインの基本コース目次から確認できます。
