「トンマナを揃えておいて」と言われて、何を揃えればいいのか分からず手が止まったこと、ありませんか?
トンマナは感覚やセンスの話に見えて、中身はただの決めごとの一覧です。色・文字・余白・写真やあしらい・言葉づかい。この5つを先に決めておくと、誰が作っても同じ印象に仕上がります。
このレッスンでは、トンマナの中身、決める順番、そしてバラバラの3枚を1つに揃える手順まで進みます。読み終わったら、そのまま自分の作品で使えますよ。
トンマナ(トーン&マナー)が指すもの
トンマナは「トーン&マナー」の略です。トーンは全体の調子、マナーは守る作法。あわせて「この作品はこういう見た目で作る」というルールをまとめたものを指します。
広告やWebの現場では、トンマナを1枚の資料にまとめてから制作を始めます。デザイナーが何人いても、途中で担当が代わっても、見た目が変わらないようにするためです。バナーを10枚シリーズで作るときも、1枚目を作る前にトンマナを決めます。
身近な例が無印良品です。商品のパッケージ、店内の値札、Webサイト。どれも同じ色数と同じ書体でできています。作った人も置かれた場所も違うのに同じに見えるのは、決めごとが先にあるからです。
ユニクロも同じです。店頭のポスター、チラシ、アプリの画面を並べると、白い背景・赤いロゴ・商品の写真という組み合わせが毎回そろっています。季節ごとに中身は変わるのに、遠くから見ても同じブランドだと分かる。これがトンマナの効き目です。

トンマナで決める5つの項目
決める中身はこの5つで足ります。項目を増やすより、1つずつを具体的に書くほうが効きます。
「あしらい」は、線・枠・アイコン・影といった飾りの部品のことです。
| 項目 | 決める内容 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 色 | メイン・サブ・アクセントの3色 | #2F6F4E/#E8F1EC/#F2A03D |
| 文字 | 見出しと本文のフォント、大きさ3段、太さ | 見出し=太ゴシック32px/本文=同じ書体16px |
| 余白 | 基準になる1単位 | 8pxの倍数だけ使う(8・16・24・32) |
| 写真とあしらい | 写真の明るさ・被写体、角丸や影の有無 | 明るめの写真・角丸8px・影なし |
| 言葉 | 語尾、一人称、記号のルール | 「です・ます」/感嘆符は1文に1つまで |
この表を大きくしたものが、デジタル庁が公開しているデザインシステムです。国のサイトで使う色・文字の大きさ・部品の形が、誰でも見られる形で決めてあります。個人が作るなら、A4の1枚で足ります。
言葉づかいまで入れるのがトンマナの特徴です。見た目だけ揃えても、1枚目が「今すぐチェック!」で2枚目が「ご確認ください」だと、別のブランドに見えます💡
言葉まで決めている実例が読めます。SmartHR Design Systemには、色や部品と並んで文章の書き方が載っています。一休が2023年12月に公開したIKYU Design Guidelineは、一休.com・レストラン・スパの3つを横断する指針です。サービスが増えても同じ会社に見せる決めごとが、そのまま置いてあります。あなたが3枚のバナーを作るときも、やることは同じで、規模が小さいだけです。
決める順番は「言葉→数字」
いきなり色を選ばないでください。先に言葉を決めて、あとから数字に置き換えます。この順番だと迷いが減ります。
- 誰に何を伝えるかを1文で書く。「30代の働く女性に、家で試せる手軽さを伝える」
- 目指す印象を形容詞3つで書く。「清潔・軽やか・親しみやすい」。4つ以上にすると矛盾します
- 形容詞を具体に置き換える。清潔=白の面積を6割/軽やか=細めの書体と広い行間/親しみやすい=角丸と丸い書体
- 見本を1枚だけ作る。全部の項目を使った完成品を1枚作ります
- 見本から表に書き写す。使った色と数値をそのまま表に落とせば、資料ができます
参考にする既存のサイトやバナーは1つか2つに絞ります。5つ集めると平均化して、どれにも似ていない中途半端なものができあがります。
ミニ実践:バラバラの3枚を1つに揃える
15分の課題です。無料のCanvaで進められます。手を動かすと、トンマナが決めごとの一覧だと実感できますよ◎
- 同じテーマのバナーを3枚作ります。文言は「新商品発売」「送料無料」「レビュー募集」など、内容が違うものにしてください。この時点では色も書体もあえて揃えません
- 3枚を並べて眺め、揃っていないところを紙に書き出します。だいたい色数・書体・余白・語尾の4つが出てきます
- 基準にする1枚を決めます。いちばん気に入った1枚で構いません
- 基準の1枚から、色3つのカラーコード・フォント名・文字の大きさ3段・余白の単位を書き出します。これがトンマナ表です
- 残りの2枚を、表のとおりに直します。表にない色と書体は使わないでください
- 3枚を並べて見比べます。シリーズに見えたら成功です
直しているうちに「表にない色を使いたい」と感じたら、その色を表に足すのではなく、既存の3色でどう表現するか考えてみてください。制約の中で作るほうが、結果として揃います。
やってしまいがちな失敗
形容詞のまま止めてしまう
「上品に」「シンプルに」で終わったトンマナ資料は、実際の制作では使えません。上品の中身が人ごとに違うからです。
直し方は、形容詞の下に必ず色か数字を1行足すこと。「上品=彩度を抑えた紺(#2B3A55)+余白を広めに(32px)」まで書けば、迷いません。
項目を増やしすぎる
20項目のトンマナ資料は、作った本人も途中で見なくなります。
直し方は、最初は5項目に絞ること。運用しながら、迷った箇所だけ足していきます。使われない資料より、1枚で足りる資料のほうが役に立ちます。
1枚ごとに最適化してしまう
「この回だけ赤を使うと目立つ」と1枚だけ変えると、シリーズ全体の統一感が消えます。目立ったのは、周りが揃っていたおかげです。
直し方は、変えるなら全部変えること。1枚だけの例外を作らないと決めておくと、判断が速くなります。
よくある質問
次に学ぶこと
今回の要点をまとめます。
- トンマナ=トーン&マナー。見た目と言葉のルールをまとめたもの
- 決めるのは色・文字・余白・写真とあしらい・言葉の5項目
- 順番は「誰に何を伝えるか→形容詞3つ→数字と色に置き換える→見本1枚→表」
- 例外を作らない。変えるなら全部まとめて変える
トンマナの中で最初に決めるのが色です。色の選び方そのものは補色と配色の型で扱っています。組み合わせの型を知っておくと、3色を選ぶ時間が短くなります。
次のレッスンはカラーコードの仕組みです。トンマナ表に書く「#2F6F4E」が何を表しているか分かると、色の指定でつまずかなくなります。コース全体の流れはデザインの基本コース目次から確認してください。
