「模写がいいらしい」と聞いて始めたけれど、なぞって終わってしまう。よくある止まり方です。
模写とトレースは、やり方を決めないと写経で終わります。逆に、見る場所と手順を決めてから始めると、1枚でかなり伸びます。差がつくのは枚数ではなく進め方のほうなんですね。
ここでは題材の選び方、トレースの5ステップ、模写への進み方、時間の配分までまとめます。今日1枚やるところまで持っていきましょう◎
トレースと模写は別の練習
同じ意味で使う人もいますが、分けたほうが上達が早いです。
| トレース | 模写 | |
|---|---|---|
| やり方 | お手本を下に敷いて、上からなぞる | お手本を横に置いて、見ながら作る |
| 分かること | 正確な位置・サイズ・余白の数値 | 自分が何を見落とすか |
| 向いている人 | 作りはじめの人 | トレースを3枚以上やった人 |
トレースは「答えを写して数字を知る」練習です。プロが何pxの余白を取っているのか、文字サイズの差が何倍なのかが、実測で分かります。
模写は「見て再現する」練習です。横に置いて作ると、必ずズレます。そのズレが、自分の見落としている場所そのものです。

題材の選び方(ここで9割決まる)
好きなデザインを選ぶと、たいてい難しすぎます。最初の題材は次の3つで選んでください。
- 要素が10個以下:文字・画像・図形を数えて10個まで。写真1枚+見出し+説明+ボタンくらいが理想
- 1枚で完結している:サイト全体ではなくバナー1枚、名刺1枚、チラシ1面
- お手本として整っている:大手企業の広告、有名サービスのバナー。素人の作品を選ぶと、崩れごと写します
探す場所は、企業の公式サイト、アプリのストアの画像、電車の中吊りの写真で足ります。素材サイトの見本も使えます。
お題そのものが浮かばないときは、バナーデザインのお題20選に具体的な題材をまとめています。作る対象が決まっていると、探す時間がまるごと消えます。
逆に、最初に避けたほうがいいのは次のものです。
- 写真の加工が凝っているもの(合成・光の演出)
- 手描きのイラストが主役のもの
- 要素が20個を超える情報量の多いチラシ
これらは再現に時間がかかるわりに、レイアウトの学びが少ないです。腕が上がってからで大丈夫です。
トレースのやり方(5ステップ)
ツールはCanvaでもFigmaでも構いません。無料のもので足ります。手順は共通です。
- お手本を敷く:キャンバスをお手本と同じサイズにして、画像を背景に置く。透明度を30〜50%まで下げて、上に作るものが見えるようにする
- 大きい枠から置く:写真の位置、色の面、ボタンの箱。四角い塊を先に置く。文字は後回し
- 文字を乗せる:フォントは似たものでOK。サイズと太さの差だけは合わせる
- 数字を測って記録する:余白は何px、見出しは本文の何倍か。ここがトレースの本体
- お手本を消して見比べる:背景の画像を非表示にして、自分のものだけを見る。そのあと並べて差を探す

測るのは3つで足ります。
- 外側の余白:端から中身までの距離
- グループの間隔:情報のまとまりどうしの距離
- 文字サイズの比率:いちばん大きい文字は、本文の何倍か
この3つをメモに残していくと、10枚たまるころには自分の中に基準ができます。「見出しは本文の2倍前後」のような感覚が、体感ではなく数字で持てるようになります💡
模写のやり方(見ないで再現する)
トレースを3枚ほどやったら、模写に進みます。手順は変わりますが、やることはシンプルです。
- お手本を30秒見て、いったん閉じる
- 覚えている構成をラフに描く(紙でもツールでもOK)
- お手本を横に開いて、見ながら作る。下には敷かない
- 完成したら並べて、違いを3つ書き出す
- その3つだけを直す
同じ弱点が3回続けて出たら、その項目を次の作品で最初にチェックしてください。それだけで作品の質が変わります。
1枚にかける時間の目安
時間を決めずに始めると、細部で沼にはまります。バナー1枚なら60〜90分で区切ってください。
| 工程 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 準備 | 5分 | 題材を開く、キャンバスを作る |
| 枠を置く | 20分 | 写真・色面・ボタンの位置 |
| 文字を組む | 25分 | サイズと太さの差を合わせる |
| 測って記録 | 10分 | 余白・間隔・比率をメモ |
| 見比べ | 10分 | 並べて差を3つ書く |
時間が来たら未完成でも止めます。細かい飾りを再現しても学びは増えません。時間内に終わらないなら、題材が難しすぎたということなので、次はもっと要素の少ないものを選んでください。
やる前に知っておくこと(公開のルール)
模写もトレースも、元になる作品は他の人のものです。練習として手元でやるぶんには自由ですが、外に出すときは気をつけてください。
- 作品集には入れない:自分で組み立てたものではないので、実力の証明になりません
- SNSに載せるなら「模写」と明記する:元の作品が分かる形で出すなら、練習だと書き添えます
- ロゴや写真素材はそのまま使わない:練習では仮のロゴ、フリー素材の写真に置き換えます
- 仕事には流用しない:構成をそのまま持ち込むのは事故になります
ミニ実践:今日の1枚を決める
読み終わったら、5分で題材を決めてしまいましょう。手順はこれだけです。
- スマホで、目に入る広告やアプリの紹介画像を3枚撮る(またはスクリーンショット)
- 3枚の要素を数えて、いちばん少ないものを選ぶ
- 選んだ1枚を、次にトレースする題材としてメモに貼る
- やる日時を決める。土曜の午前など、日付まで決める
- 当日は5ステップの手順どおりに進める
できあがったら、次のチェックで自分の1枚を確認してください。
- お手本を消した状態で、レイアウトが成立している
- 余白・間隔・文字の比率を数字でメモした
- お手本と並べて、違いを3つ書き出した
- 60〜90分で切り上げた
4つとも埋まっていれば、その1枚はちゃんと練習になっています。
よくある質問
次に学ぶこと
まとめます。
- トレースが先、模写があと。順番を逆にしない
- 題材は要素10個以下・1枚完結・整っているものを選ぶ
- トレースの本体は「測って記録する」工程
- 模写では違いを3つ書き出す。それが自分の弱点
- 1枚60〜90分で切り上げる
- 模写は作品集に入れない
模写だけを続けても、途中で伸び方が鈍ります。直す練習や、条件を変えて比べる練習を混ぜると、また動き出します。
組み合わせ方はデザイン練習の進め方にまとめました。4つの型をどう配置するかの話です。
模写しながら見る場所を決めたい方はデザインの4原則を横に開いておいてください。近接・整列・反復・対比の4つが、そのままお手本を読む視点になります。
コース全体の並びはデザイン基礎コースの目次から確認できます。
